7月31日(水)
当法人がこれまで開催して参りました「日光まちづくり講座」のシリーズ。
今回は、「観光」をテーマに社会学者の中井治郎先生をお迎えしてお話を伺いました。
25名の方にご参加いただき、会場はほぼ満席状態。
行政の各セクションからのご参加もいただきました。
各メディア等でご活躍の講師の中井先生の人気と期待、観光まちづくりへの関心の高さが窺えました。
インバウンド熱からコロナ禍を経て、観光が再始動しました。
月毎のインバウンドの数が記録更新を重ねる中で、再び「観光」への期待も高まっています。
一方でオーバーツーリズムや地域住民との摩擦など、観光地の暮らしへの危機も取り沙汰されています。
このような状況から、「観光のジレンマ」を少しだけ解きほぐしつつ、“観光客も観光地もお互いに幸福な観光のあり方”を探るために先生をお招きしました。
世界一高所「エベレスト」での衝撃の「オーバーツーリズム」から、京都の観光の推移や、渋谷の路上飲み、富士山コンビニ等の昨今の各地での摩擦、問題の振り返りやそれらの解説もいただきました。
そして、現在日本が置かれている状況についても、解説されました。
日本が「観光する国」から「観光される国」になってきており、それが「曲がり角」に来ていること。現にインバウンドは増え、国内旅行(日本人観光客)は減っているそうです。
地域の文化や暮らしが消費されるような状況は好ましくなく、即ちそれは資源の奪い合いにつながるとのこと。
観光地の暮らしが「観光」に押し出されるような状況がまさにそれをさします。
例えば、普段飲みに行っていた馴染みの店が、急に観光客で一杯になり、なかなか行けなくなってしまうことなど。
地域や文化、環境へのリスペクトが無いまま受け入れていると、やがて文化がフリーライドされるような状況が起きてしまいます。
それを防ぐためには、誰にとってどうあるべき場所かということを観光の視点で再構築・再整理してみる必要がありそうです。
(この辺は、面的計画や観光の質の確保という観点では都市計画ともリンクし、まさに「観光まちづくり」の範囲になってくるかもしれません)
これらのことから、プロモーションからリスクコントロールへと、観光の“熟度”を上げていくことの大切さも学びました。
受け入れの面で整備が追いついていないように見える、とは中井先生談。
講演の前半では各事例をもとに「誰が何を何故怒っているのか?」を紐解くことが、オーバーツーリズムや各地での摩擦を解消していくポイントになるという大きな指摘もありました。
後半は、当法人の理事長・岡井と事務局長・小池もモデレーター、パネラーとして参加し、会場の方々も交えて観光談義を行いました。
・日本で「観光」と言えばプロモーションの色合いが強い。本当にそれだけで良いのか。
・かつての日光の観光が恵まれていたことで、サービスの質が低下したとも聞く。修学旅行の受け入れをどうみるか、ということも念頭に置くべきでは。
・今後も国内旅行減の状況は続くか?トレンドはどう動く?
・自分も全国旅をするが、旅を”深める”には?
・観光のゴールは来てもらうことではなく、地域のファンになってもらうことでは。
・一度「数」に合わせる(大量輸送、大量宿泊)と、なかなか減らした上での質の確保に戻るのは難しいのでは
など質問や意見が出ていました。
中井先生の、時にユーモアも交えた貴重な講演に、参加された方々は時に笑いが起きつつ熱心に聞き入っていました。
終了後も先生に熱心に質問される方や、心嬉しい感想が多く有意義な会になったことが確認されました。
ご参加いただいた方々のそれぞれの「観光」の現場で、今回の学びが活きることを願います。
引き続き、今後もこのような機会を設けて参ります。
どうぞよろしくお願いいたします。
<事務局>